2013年5月
「5月の所感」。
参議院本会議で、川口順子参院環境委員長の解任決議案が可決しました。
当時の川口委員長が国会の同意なく中国滞在を延長したからとの理由のようですが、
このような形で解任決議案が出されること自体、またその決議案が可決し要職の常任委員長が解任されることは、誠に異例中の異例です。
恐らく憲政史上初めてのケースと言えます。
川口元委員長は、中国要人と会談し、尖閣問題をはじめとする我が国最重要の国益を主張し追求するため渡航期間の延長を求めましたが、野党から理解が得られませんでした。
非常に残念な事です。
川口元委員長は、元外務大臣で、霞ヶ関時代から堪能な語学力と巧みな交渉力で数々の外交交渉をこなし我が国国益を増進させてきました。
私も在米時代、ワシントンの日本国大使館で共に働いたことがあり、当事のSIIと呼ばれた日米構造協議の中心的交渉者が当事の川口公使でした。
主要交渉分野の中でも極めて難物と言われた排他的商慣行の分野で見事な交渉力を発揮し交渉を成功裏に纏め上げました。
これほどまでにタフネゴシエーターはいないと米側を唸らせたのが当時の川口公使でした。
今回も国会の承認を得ての国際的シンポジウムへの出席であり、今後の日中関係が主な議題だったため、中国首脳と忌憚ない意見交換が大いに期待される場面でした。
こうした国際的舞台では会議自体が長引くことはよくあることですし、追加的に中国首脳と話し合うことはまさに国益にかなったものであります。
些細なことで揚げ足をとる野党の態度は、国益より党益を選んだと言われても仕方ありません。
かつて吉田茂総理も総理時代首相官邸に入らず外相公邸にいて国の外交の陣頭指揮をとりました。
今の野党なら警備上のことや些細な規則上のことなどを盾に総理が首相官邸に入らないことを批判したことでしょう。
当時も一部そのような論調もあったようですが大局的観点から永年外交官として慣れ親しんだ外相公邸に吉田首相がいたことは当然許容され是認されるわけです。
その結果戦後の講和の実現と日本の主権回復という大仕事を成し遂げたわけです。
真の国益を追求することこそ国を預かる政治家です。
勿論些細なことでもルールを遵守する努力は最大限なされなければなりません。
そのことを怠っていたならば川口元委員長も非難されるべきでしょう。
しかし川口元委員長は理解を得るべく最大限の努力を行ったわけです。
勿論滞在延長を相談し事前に野党含め全会派の了承を得ることがベストであることは論を待ちません。
川口元委員長も苦渋の決断だったとは思いますが川口元委員長が大局的判断として滞在延長を決断したことは当然是認されるべきであります。
最近日中間の首脳レベルでの交流や意見交換は途絶えており今回の外交のプロの川口元委員長のトップレベルでの外交のチャンスは極めて貴重な機会なのです。
川口元委員長自ら記者会見でこれで解任されるのは「理不尽」だと語ったことは、けだし至言です。
真の国益を実現する政治を我々政治の世界に身を置く者は常に考えるべきです。
今回の事例を他山の石として我々は国益を胸に、そして大局的判断でもって行動すべきことを肝に命ずるべきでしょう。